営業が1人だった、 地獄みたいな時期から、
半年ちょっとが経った頃でした。
ようやく、 新しい上司が、 所長として栃木営業所に来てくれることになりました。
これで営業は2人体制。
元々3人が適正人数なので、 全然余裕があるわけではありません。
でも——
半年間、 1人で営業所を回していたぼくにとっては、 それだけで、とんでもなく心が軽くなりました。
「あ、これで自分が多少休んでも営業所止まらへん…」
そんな当たり前のことに、 少し感動したのを覚えています。
周りからも、 本当にたくさん声をかけてもらいました。
「よく耐えたよな」
「マジで大変だったでしょ」
「お前すごいよ」
部長からは、 わざわざ頭を下げられました。
「本当にありがとう」
「信頼してたから、任せた」
その言葉は、 すごく嬉しかった。
お客さんからも、 社内の人からも、 頼ってもらえる。
必要としてもらえる。
昔、 営業だけは絶対やりたくないと思っていた自分が、 そんなふうに言ってもらえている。
正直、 かなり満たされていました。
たぶん、 社会人になってから、 一番“仕事が楽しかった時期”だったと思います。
でも——
そんな頃でした。
ChatGPT4.0が、 世の中に出てきたのは。
最初は、 「なんかすごいAIらしい」 くらいでした。
でも、 触ってみて、 衝撃を受けました。
(え、これヤバくない…?)
商品比較。
提案文。
知識整理。
情報収集。
ぼくが今まで、 時間をかけて積み上げてきたことを、 AIが一瞬で出してくる。
もちろん、 当時はまだ完璧ではありません。
でも、 未来が見えてしまったんです。
(これ、どんどん進化するやつや…)
って。
ぼくは、 有形商材の営業をしていました。
商品知識。
比較提案。
相手が求めている以上の情報提供。
それが、 自分の強みだと思っていました。
でも、 AIは、 その“強み”を、 ものすごい速度で飲み込み始めていた。
そのとき、 初めて怖くなりました。
「じゃあ、自分の価値って何なんやろ」
って。
もちろん、 全部がAIに置き換わるとは思いませんでした。
でも、 “知識を持っているだけ” では、 必要とされなくなる未来が、 見えてしまったんです。
そしてぼくは、 気づきました。
自分が一番嬉しかった瞬間って、 なんやったっけって。
売れたとき?
表彰されたとき?
数字を作ったとき?
もちろん、 それも嬉しかった。
でも、 一番心に残っていたのは、 違いました。
「〇〇くんいる?」
「助かったよ」
「頼りにしてる」
そう言ってもらえた瞬間でした。
ぼくは、 “頼られること”が、 好きだったんです。
だから思いました。
もっと、 人の感情が動く仕事をしたい。
もっと、「この人じゃないと」 と思ってもらえる仕事をしたい。
そして、
「誰がやっても同じ」にはなりたくなかった。
そう考えたとき、 ぼくの中で、 人材紹介という仕事が、 一気につながりました。
求職者さん。
法人さん。
どっちにも感情がある。 正解もない。
だからこそ、 「誰がやるか」 が大きく変わる仕事に見えました。
「あ、この仕事やってみたい」
そう思いました。
もちろん、 悩みました。
だって当時のぼくは、 かなり恵まれていたからです。
お客さんにも、 社内にも、 頼ってもらえていた。
仕事も楽しかった。
環境も良かった。
でも、 だからこそ思いました。
“最高のタイミングで辞めたい”
って。
苦しくなってから辞めるんじゃなくて。
必要としてもらえている今、 次へ行きたい。
そう思って、 ぼくは転職活動を始めました。



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